【ピアノ講師が解説】バッハ インベンションの難易度と進め方

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教材

こんにちは!ピアノ講師のみゆぽんです。

「インベンションに取り組んでいるけど、なんだか難しくて…」

「どの曲から練習すればいいの?」

ピアノを習っているお子さんをお持ちの親御さんや、大人になってからピアノを始めた愛好家の方から、こんな声をよく聞きます。

バッハのインベンションは、ブルグミュラーを終えたあとに登場することが多い教材。名前からして難しそうなイメージがありますよね。

でも大丈夫です。順番を知って、正しく取り組めば必ず弾けるようになります

この記事では、現役ピアノ講師の私が実際のレッスン経験をもとに、全15曲の難易度と練習する順番をわかりやすく解説します。

インベンションとは?

バッハのインベンション(正式名称:2声のインヴェンション)は、18世紀の作曲家、ヨハン・セバスティアン・バッハが息子の音楽教育のために書いた鍵盤楽器用の練習曲集です。

全15曲で構成されており、それぞれ異なる調性で書かれています。

現代のピアノ教育でも「ブルグミュラーの次のステップ」として広く使われており、クラシックを本格的に学ぶ上で欠かせない教材のひとつです。

ブルグミュラーとの難易度比較

ブルグミュラー25番インヴェンション
声部メロディ+伴奏2つの独立したメロディ
難易度初級〜中級中級
対象年齢目安小学中学年〜小学高学年〜
身につくこと表現力・テクニック多声的な聴き分け・読譜力

インベンションが「難しい」と感じる理由

インベンションに入ったとき、多くの生徒さんが「今までと全然違う!」と感じます。

その理由はポリフォニー(多声音楽)という書き方にあります。

ポリフォニーとは?

ポリフォニーとは、複数のメロディが「対等な立場で」同時に重なって演奏される音楽の形式です。

一番わかりやすいのは、合唱のイメージです。

合唱でソプラノとアルトがそれぞれ違うメロディを歌いながら、美しいハーモニーを作りますよね。

どちらが主役というわけではなく、2つの声部が対等に絡み合って1つの音楽になっている、まさにあのイメージです。

インベンションはこれをピアノの右手と左手でやります。

今までの曲との違い

ブルグミュラーまでは「右手はメロディ、左手は伴奏」という役割分担が明確でした。

ところがインベンションでは、左手にも歌うようなメロディが登場します。

これにより、次の2つが同時に求められます。

  • 2つのメロディをそれぞれ意識して弾く
  • 2つの声部が重なるハーモニーを聴きながら弾く

最初は混乱するのが当然です。

でも慣れてくると、この「2声のかけあい」がとても楽しくなってきますよ。

全15曲を難易度別に分類してみた

インベンション15曲は、ピティナ・ピアノステップではすべての曲が「応用3〜発展1」に分類されていますが、実際のところは難易度が全て同じではありません。

私自身が弾いた経験や、レッスンでの生徒さんの様子をもとに、3段階に分類しました。

注意: 難易度は演奏する速さや装飾音の入れ方によっても変わります。ここでは「譜読みのしやすさ」と「指の動かしやすさ」を基準にしています。

取り組みやすい曲(入門グループ)

インベンションを始めたばかりの方におすすめの曲です。2声のかけあいが比較的シンプルで、譜読みもしやすいグループです。

第1番 ハ長調

黒鍵がほとんどなく、譜読みがしやすい。インベンションの入門として最適な1曲。右手のメロディを左手が追いかける動きが明快で、ポリフォニーの仕組みを理解するのにぴったりです。

第4番 ニ短調

短調の響きが美しく、生徒さんにも人気の曲。1番に慣れたら次に取り組みたい1曲です。音型がシンプルで反復が多いため、比較的弾きやすいです。

第8番 ヘ長調

明るく流れるような曲想が特徴。両手の動きが似たパターンで進むため、譜読みがしやすい反面、指を速く粒立ちよくまわす練習が必要です。

第10番 ト長調

軽やかで明るい曲。音型がシンプルで流れをつかみやすく、比較的スムーズに譜読みが進みます。

第13番 イ短調

シンプルな構成で作曲されており、譜読みがしやすい。落ち着いた曲想でじっくり取り組める1曲です。

中級レベルの曲(標準グループ)

ある程度インベンションに慣れてきたら挑戦したい曲たちです。

第6番 ホ長調

ホ長調という調性上、黒鍵が比較的多く登場します。なめらかな音階が美しい曲想ですが、指使いに工夫がいります。

第7番 ホ短調

哀愁ある美しいメロディが印象的。装飾音が多く出てくるため、難易度は少し高めです。

第9番 ヘ短調

ヘ短調らしい重厚なフレーズが続きます。表現の幅がぐっと広がる1曲です。

第14番 変ロ長調

比較的シンプルな構成ですが、両手の細かい32分音符の粒を揃えるのにテクニックと集中力が必要です。

第15番 ロ短調

比較的自由な形式で書かれているため、少し構成が分かりにくいかもしれません。

難易度の高い曲(上級グループ)

このグループまで弾けるようになると、次のステップ(シンフォニアや平均律)への土台が整います。

第2番 ハ短調

インベンションの中で特に難しいと言われる曲のひとつ。短調の複雑な音型と両手の絡み合いが高度です。バッハ自身が最後に弾かせた曲とも言われています。

第3番 ニ長調

明るく活発な曲想ですが、テンポが速くなりがちで指がもつれやすい。見た目よりも難しく、完成させるのに時間がかかる1曲です。

第5番 変ホ長調

黒鍵が多く、譜読みに時間がかかります。長いフレーズのテーマを流れ良く弾くことが難しいです。

第11番 ト短調

暗く内省的な雰囲気で、2声のバランスと表現力が同時に求められます。完成度を上げるほど音楽の深みが増す、やりがいのある1曲です。

第12番 イ長調

明るい曲調ながら、両手の細かい動きが続きます。長い音の装飾音符を粒立ちよく弾ききるテクニックが必要です。

練習する順番はどうする?

先ほどの難易度分類を見ていただくとわかる通り、番号と難易度は必ずしも一致していません。

たとえば1番は弾きやすい曲ですが、2番や3番はかなり難易度が高く感じる曲です。番号が小さいからといって簡単とは限らないのです。

つまり、「番号順に進めることにこだわらなくていい」というのは、インベンションの大きな特徴のひとつでもあります。

実際に音楽の研究者や演奏家の間でも「どの順番で取り組むべきか」は諸説あります。代表的なものをご紹介します。

バッハ自身が推奨した順番

バッハが息子フリーデマンのために書いた練習帳をもとにすると、以下の順番が推奨されていたと言われています。

1→4→7→8→10→13→15→14→12→11→9→6→5→3→2

調性の理解を重視した並び方で、テクニックの難しさよりも「調性の順序」に重きを置いています。

長岡敏夫説

1→4→8→13→10→11→14→15→3→2→6→5→7→9→12

園田高弘説

1→3→4→7→10→13→14→15→2→8→5→6→9→11→12

3つの説に共通しているのは、「1番から始める」「2番と12番は後半に回す」 という点です。

私のおすすめしたい順番

私のレッスンでは、生徒さんの得意・不得意を見ながら順番を決めています。ただし基本的な流れはこうです。

まず取り組む :1番→13番→8番
慣れてきたら :生徒さんの好きな曲・弾きたい曲を優先
難しい曲は最後:2番・3番・12番

特に生徒さんが「この曲弾いてみたい!」と言ったときは、多少難しくても積極的に取り組ませます。

「弾きたい」という気持ちがある曲は、驚くほど早く仕上がるからです。

上手に進めるための3つのポイント

インベンションに取り組むとき、多くの生徒さんがつまずくポイントがあります。

現役講師として「これだけは意識してほしい」という3つをご紹介します。

ポイント① 譜読みは片手ずつ

インベンションの練習で一番大切なのは、いきなり両手で弾き始めないことです。

まず右手だけ、次に左手だけをしっかり譜読みしましょう。

インベンションは右手も左手も対等なメロディを持っているため、片手ずつ「このテーマはどんな流れか」を頭に入れておくことがとても重要です。

両手を合わせるのは、片手それぞれがある程度スムーズに弾けるようになってから。

焦って両手合わせに進むと、どちらの声部も中途半端になってしまいます。

ポイント② 指使いをよく考える

行き当たりばったりで指使いを決めてしまうと、テンポが上がったときに指がもつれたり、毎回違う指で弾いてしまったりと、なかなか仕上がりません。

適切な指使いがわからない場合は、先生に相談したり、他の版を参考にするなどをして、譜読みの段階で楽譜に指番号を書き込んでおくのがおすすめです。

特に音が交差する部分や、黒鍵が続く部分は念入りに確認しておきましょう。

ポイント③ 調性と和声の流れを理解してから弾く

インベンションは、ただ音符を追って弾くだけでは本当の意味で「弾けた」とは言えません。

曲の調性と和声の流れを理解することが、バッハを弾く上でとても大切です。

ある程度の譜読みが終わったら、以下の点を確認する習慣をつけましょう。

・この曲は何調か?
・途中でどの調に転調しているか?
・主題がどこで出てきて、どの声部に現れているか?

たとえば1番ハ長調であれば、途中でト長調やイ短調に転調する箇所があります。

その転調を意識して弾くだけで、フレージングや強弱の付け方が自然と変わってきます

また、主題がどの声部に現れているかを把握することも重要です。

右手に出てきた主題が左手に移ったとき、そちらをしっかり聴かせるように意識するだけで、演奏の質がぐっと上がります。

最初は難しく感じるかもしれませんが、なぜここでこの音が来るのか」を理解して弾くことが、バッハの音楽の面白さに気づく第一歩です。

分析しながら弾くことで、インベンションがぐっと楽しくなってきますよ。

どの楽譜を選ぶ?

インベンションの楽譜はいくつかの出版社から出ています。

それぞれ特徴が異なるので、目的や状況に合わせて選んでみてください。

東音企画版(おすすめ!)

私のレッスンでも実際に使っている版です。

ブルグミュラーの記事でもご紹介した東音企画ですが、インヴェンションでも同様に信頼できる版です。

こちらは石井なをみ先生監修のインベンションシリーズ。指使いや、アーティキュレーションを自由に書き込める形になっています。

併用できるワークブック、指導に役立つ解説ブックもあり、先生・生徒ともに私が一番おすすめしたい版です。

音楽之友社(長岡敏夫 編集)

長岡敏夫氏の長年の研究による奏法や懇切ていねいな解説がつけられているので、初めてインベンションに取り組む方や、お子さんのレッスンに最適です。

ヘンレ版(原典版)

装飾音や強弱などの指示が最小限に抑えられた原典版です。自分で解釈を考えながら弾きたい上級者や、音大を目指す方向けです。

書き込みがほとんどないため、自分のペンで表現を書き込んでいく楽しさがあります。


まとめ:インベンションは「怖くない」

バッハのインベンションは、確かに今までの曲とは違う難しさがあります。

でも正しい順番で、焦らず取り組めば必ず弾けるようになります。

インベンションを乗り越えた先には、シンフォニアや平均律クラヴィーア曲集という、さらに奥深いバッハの世界が待っています。

一曲ずつ丁寧に積み重ねて、ぜひバッハの音楽の魅力を味わってください!

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